信者が作った?伝説の不謹慎ゲーム『上九一色村物語』で遊んでみる


不謹慎ゲーム(ふきんしんゲーム)は、注目度の高い事件や事故が発生した後にそれらをネタにして作成、発表され、 その事件を茶化すことを主な目的としたコンピュータゲームの総称である。

こういった不謹慎ゲームは、インターネット上の媒体において、興味本位で話題に採り上げられる一方で、批判も受ける。 不謹慎ゲームにおいては否定的な意見のほうが多い。

ただし、死者が出た事件や災害を題材とせず、 事件の中心となった特定個人の「社会的懲罰」の意味合いが感じられるもの、 製作者本人が事件を風化させないためと公表しているような場合は、許容する意見も増える。

Wikipedia記事『不謹慎ゲーム』より


不謹慎ゲーム―今ではとうの昔に廃れた文化である。飛行機をビルに突っ込ませたり、毒入りカレーを作ったり、地下鉄にサリンを撒いたり、そしてブルース・リーの親戚・陳が出てくる正体不明のアレのことだ。

ほとんどの作品は90年代から2000年代にかけて、匿名掲示板を中心に広まった個人製作のものであった。その多くがデータ消失など時代の波に飲まれ、現在はプレイ困難な状態となっている。

不謹慎ゲームはその名の通り、無法地帯そのものであった。著作権無視・誹謗中傷・人種差別・性差別など、見るに耐えない表現が満載で、ゲームとしても思いつきだけで作られたような単調なクソゲーばかりだ。その上、ファイル内にコンピュータウィルスが仕込まれていたりするのだから、危険極まりない。

・・・とまあ当然のように忘却の一途を辿る不謹慎ゲームだが、その歴史はインターネット文化を支える匿名性・アングラ性と密接に結びついている。不謹慎ゲームを振り返ることは、現在のネット文化のルーツを知る一つの手がかりとなるだろう。

今回は、日本に不謹慎ゲームの黄金期をもたらしたオウム真理教事件と、それを題材とした作品について語ってみることにする。新聞で批判を受けた『霞が関』や、PC内のデータが全消去されてしまう恐怖のゲーム『倉庫番in上九一色村』など、一大ジャンルを築いたオウム・ゲームたち。

その中でも異彩を放つのが、教団育成シミュレーションゲーム『上九一色村物語』だ。その異様な内容から、ネット上では「信者が制作した」と噂されることも多いが、果たして本当だろうか。実際にプレイして、その謎に迫ってみることにしよう。


早速ゲームを開始する。
注:スクショボタンを連打したため、画像にRetoroarchの保存メッセージが入り込んでいますが、気にしないでください!

上九一色村物語3

プレイヤーは麻原彰晃となって、89年10月から95年3月の間、衆生の救済を目指して教団拡大に勤しむこととなる。

ゲーム内で選べる行動は以下の5つだ。

修行

体力を消費して様々な修行を行い、信者を増やす。

成功/失敗判定があり、失敗すると体力を消費するだけで何の成果も得られない。体力がゼロになると問答無用でバッドエンドに直行。失敗率が妙に高いような気がするが、カリスマを磨くのも一筋縄ではいかないということか。体感、2回に1回は失敗しているような気がする。教祖ともあろう者がそんなに失敗して大丈夫なのか。

上九一色村物語4

イニシエーション

信者に儀式を施したり、グッズを販売したりして資金を調達。得られる金額は信者の数に依存する。
詳細は不明だが、5-10程度の体力が減ることもある。うっかり死んでしまわないよう注意するべし。

上九一色村物語7

布教

選挙活動やメディア露出を通じて教団の知名度を上げる。
95年3月までに全ての布教イベントを完了させることがグッドエンドの条件の一つだが、金がかかる上にステータスへの直接的な影響はない。貴重な映像が見られるが、それ以外のメリットはなし。

投資

飲食店やパソコンショップなどを経営し、安定した収入源を確保。
設置した施設の数に応じて、毎月「施設数×100万円」の収益が得られる。何をするにも資金が必要なこのゲーム、経営手腕が勝負の分かれ目だ。隙あらば投資に全振りせよ。

上九一色村物語6

休憩

体力を回復するためのコマンド。一度の休憩で体力を30回復できる。
体力は時間経過では回復しないため、40以下になったらこまめに休憩を取ることが推奨される。体力が最大の状態で休もうとすると、林郁夫から「休んでる暇はありませんよ」と釘を刺される。

上九一色村物語5
ゲームにはお馴染みの幹部たちも登場。
1bitの顔画像とホーリーネームで、誰が誰だかわかったらなかなかの教団マニアと言えるだろう。
上九一色村物語1


まずは定石通り、全資金を「投資」に集中させ、毎月の定期収入を確保しよう。ちなみに信者を労働力として活用するため、人件費がかからないという驚異のビジネスである。

投資で減った資金が時間経過で回復する間、ただ待つだけではもったいない。「修行」コマンドを実行し、水中クンパカまで修行を完遂させよう。この間効率が悪くなるので、他のコマンドには手を出さないこと。ただし、修行を繰り返すと急激に体力が減少するため、修行2回につき1回は「休憩」を挟むと良いだろう。

修行をすべて終えると、信者数が7000人以上に達しているはずだ。ここからは「イニシエーション」で本格的な資金稼ぎに移行。まとまった資金が得られたら、都度布教活動を実施し、愉快なムービーを楽しむのも一興だ。

ゲーム内時間で1994年7月に到達すると、尊師がガス中毒になるイベントが発生する。

上九一色村物語2
上九一色村物語8
ガス中毒になった挙句、なぜかQ熱リケッチア症にかかる尊師。

毎月すごい勢いで体力が減少し、「休憩」を連打せざるを得ない状況に。まともに行動するのが困難になるため、イベント発生前に十分な体力を確保しておこう。

95年3月時点ですべての修行・イニシエーション・投資・布教イベントを完了すると感動のエンディングが待っているぞ。もし終わらせてない場合、ハルマゲドンが起こって人類が滅亡してしまうのだ!

上九一色村物語8

さて、この『上九一色村物語』だが、ゲームとしては練り込み不足であると言わざるを得ない。いくつか具体的な問題点を挙げてみよう。

まず、「修行」で信者が増えるというシステムが謎である。本来なら「布教」によって信者を増やすべきではないのか?長野県内の小さな村での修行が全国の信者増加に直結するのは説得力に欠ける。その水中クンパカを誰が見ているんだ?

その影響か、投資と修行ばかりが重要になり、布教がグッドエンドの条件を満たすだけの死にコマンドになってしまっている。(楽しいムービーが見られるとはいえ、ゲームプレイ上の意義は薄い。)

さらに、史実を反映したおべんと・・・ではなくイベントの数々がゲームのステータスに何の影響も与えないのも問題だ。

上九一色村物語3
オウムの名キャッチコピー、「これはもう、おべんとのイベントだ」

坂本弁護士一家のような凶悪事件をゲーム内の資金・信者数にどう反映させるかは難しい問題だが、選挙期間中に信者がお金を持ち逃げした事件のような、ゲームイベントに組み込むには格好の題材でさえも、「尊師の勘違いでした」という、取って付けたようなオチで片付けられているのは惜しい。

上九一色村物語10
上九一色村物語11

これらのイベントは雰囲気作りには寄与しているものの、プレイヤーの戦略には何の影響も与えないため、結果的にゲーム体験を単調なものにしている。

一方で、シティーハンターサブリミナル事件のような、どうでもいいイベントに信者数+500の効果があったりする。この一貫性のなさを見るに、当初はイベントごとにステータスが変動する仕様を考えていたものの、途中で放棄されたのではないかと思われる。

というわけで、このゲームを投資シミュレーションとして評価するならば、ゲーム性が薄すぎて今ひとつの出来と言わざるを得ない。販売を担当した『香港97』でお馴染み、ハッピーソフトの代表・陳大黒ことクーロン黒沢は、ゲーム雑誌の記事に「光栄のゲーム並みに遊べますよ」と書いているが、さすがに光栄に対して失礼すぎる。襟川恵子でも助走をつけて殴るレベル。


では、なぜ『上九一色村物語』が特別視されているのだろうか?その理由は、シミュレーションの出来の悪さを補って余りある、異様な雰囲気の演出にある。

右上に表示される1ビットの顔面画像・奇妙なBGM・信者の肉声・大量のニュース映像や報道写真・自作イラストといった多種多様な素材が、テンポ良くフラッシュバックのように現れる。ゲームというより、一種の体験型メディアアートと言えるかもしれない。(褒めすぎかもしれない!)

資料としての価値もさることながら、大量の素材をテンポ良く操る技術力には思わず感心せざるを得ない。特に印象的なのは「真理党出馬イベント」のシーンだ。♪しょーこーしょこしょこしょこーという陽気なBGMに乗せて、真理党結成時の写真がスライドショーのように次々と流れる。

上九一色村物語選挙ポスター
上九一色村消費税廃止

実際の選挙ポスターや、ゾウの帽子をかぶった美女軍団、消費税廃止を掲げて選挙カーの上で楽しげに踊る信者たちの姿が映し出される。さらには、尊師の「できたらトップ当選したいなというのが、あのー、今の願いですけどね。」というセリフ。

まるでお祭りのような光景が展開される中、突然BGMが止まり、画面に「全 員 落 選」の文字が現れる。続いて麻原本人の声で「今回の選挙の結果は、はっきりいって惨敗。」という衝撃の一言が!な、なんだってー!

上九一色村落選

この2コマ落ち漫画を彷彿とさせるユーモアに思わず笑ってしまう。さらに、出馬イベント後の通常BGMが「ガネーシャ体操」からお馴染み「尊師マーチ」に変わるのも心にくい。このような細かな演出が、このゲームを単なる不謹慎クソゲーではなく、唯一無二の異様な体験へと昇華させていると言えよう。

このカルトゲーム・上九一色村物語を作った作者はどのような人物なのだろうか。ゲームのReadmeファイル内では『えんじょい・はぴねすの会』会員見習い・Kと名乗っているが、信者が作ったゲームという噂は本当なのだろうか。当時の週刊SPAに作者インタビューが掲載されていた。

(注:えんじょいはぴねす=91~93年の間刊行されていたオウムの会報)


「みっ……見ましたか……?」

アッ。はい…すっ凄いけど……これ、どこかで売るんですか?

「いや…あっあんなもの怖くて売れませんよ。ねっ念のために言っておきますが、ぼっ僕は信者じゃないですよ。オッオウムは嫌いです」

じゃ、なんでこんなゲーム作ったんですか?

「こっ今年ゲーム業界に就職したくって…。持っていったらウケるかなと、おっおっ思ったら、気合入りすぎちゃって…」

なるほど。あなたまだ学生なんだ。これ、どのくらいの期間で作ったんですか?

「そっそうですねえ。実際作り始めてからはひっひと月くらいですけど、春から3か月くらいワイドショーばっかり見て…。ネッネタ集めとか、たっ大変でした。」

そりゃこれだけ写真ばっかり動かしてたんじゃ資料集めは大変だよね。そうそう、オウムの曲が6曲ぐらい入ってたけど、これは…どうしたの。

「サッサッサティアンまで行って買いました。いっ1曲6000円もして…たた高かったです」

かなり苦労していますねえ。それで実際に就職活動の時には持っていったんですか?

「……まっまさか。さっ最初はネタがイイからウケると思ったんですけど…そのうちシャレにならなくなってきちゃって。ぼっ僕って途中でやめられないんです……」

そうですよねえー。私がもし面接する立場だったらねえ、これ見せられたら一発で採用するけど、普通の奴じゃ誤解されちゃうもんね。それで就職活動はどうですか?

「あっ…あのその。コナミとセガと ナムコはダッダッダメでした!!」

まあまあ落ち着いて。それでこれからどうするんですか。

「まあ…。就職もダメかもしれないんで。最初は趣味で作ったんですけど…ねえ」

ハア。それで?

「うっ…うっ売ってみようかと」

おお、これ売るんですか? それはある意味で尊敬しますけど。いい出来ですし…でも、大丈夫ですか?

「わっ…わかりません…でっでもサティアンでテープ沢山買って、お金全然ないんですよ。もうダメです。がっががが我慢できません」

しかしこれをどうやって売るんですか?まともにこんなもの売ったら、あの、突然消えちゃったりとか。大丈夫?

「そっそのことなんですけど……。きっ昨日、上野に行ってきたんですよ」

ハァ、なんでまた上野に?

「イッイッイラン人。いるでしょ。いっぱい上野に。あのイラン人が、けっ携帯電話。僕にうっ売ってくれるって言うんです。4万円でいいそうなんです…」

もしかして、その携帯電話はひょっとすると暗黒系のほうのブツですよね。それなら大丈夫ですね。それで例のソフトは幾らくらいで売るつもりなんですか?

「あっあの一応1万4500円で…」

…あ、せいぜいがんばってください。

週刊SPA 1995年9月20日号 電脳画法 第20回 暗黒ソフト入手!より


えー・・・というわけで、『上九一色村物語』は信者が作ったゲームではなく、就職活動のために作られたゲームでした。己の技術力をアピールするつもりで制作を始めたものの、作っているうちにどんどん凝りすぎてしまい、最終的にはとんでもないものが生まれてしまったという。

まるでフランケンシュタイン博士のような言い草である。

ちなみに当時の『SPA!』編集部もプレイしたらしく、「ウケを狙おうとして、オウムの宗教的側面が落っこちているのが残念。」と意外にも真面目な感想が掲載されていた。まあ、こんなものウケ狙い以外で作るわけがないだろう。不謹慎ゲームというジャンルがまだ定着していなかった時代ゆえの、貴重な意見かもしれない。

それにしても、彼の就職活動は上手くいったのだろうか?そして『上九一色村物語』は売れたのだろうか?


これにて一見落着・・・かと思いきや、思わぬ場所からさらなる新事実が判明した!

2019年のVICE(英語版)の記事に『上九』についての記事があったのだ。なんとその中に作者のプロフィールについての言及が含まれているではないか!英語記事なので検索に引っかからず、完全にスルーしていました。

その記事はこちらである→The True, Secret History of the Creepiest Cult Game Ever Made

記事を書いたMatthew GaultはVICE、ロイター、ニューヨーク・タイムズ等の有名メディアで執筆経験のあるベテランライターで、専門はインターネットカルチャーや軍事紛争、過激政治運動とのこと。

彼はYOUTUBEの動画で『上九』の存在を知り、興味を持ったという。discordやオンラインフォーラムで活動するレトロゲームマニアの力を借り、フェイスブックを通してクーロン黒沢に連絡を取った。

詳しいことは当該記事を呼んで頂くとして、黒沢の証言から重要部分をざっと訳してみるとこんな感じである。


『上九』を製作したのはカナイカラサワという二人組グループで、共同で沢山の作品を残している。

・彼らはオウム真理教の拡大に衝撃を受け、『上九』を製作した。

・二人は高校時代からの友人で、非常に才能のあるプログラマだった。

その内一人はコナミに入社したらしいが、20年以上連絡を取っていないので、今何をやっているかはわからない。


な、な、なんと、発表から30年近くの時を経て作者有力候補が現れるという驚きの展開である。

・・・とここで、前編で掲載した「SPA」の記事を思い出してほしい。SPA紙上でインタビューに答えていた『上九』製作者(以下、SPA作者)は、自らの就職活動について「あっ…あのその。コナミとセガとナムコはダッダッダメでした!!」と答えていなかったか?はたしてSPA作者=カナイカラサワなのだろうか?どうも疑わしくなってきた。

X(旧ツイッター)で「カナイカラサワ」で検索すると、ある一つの画像がヒットした。

「ほんわかニュース号外」と題されたチラシ、ファンに宛てたお知らせのようなものだろうか。中身は”唐沢君”にそっくりの連続コンビニ強盗が出た!というおふざけ記事だが、文面に注目してほしい。


かなりの話題を呼んだ「コンビニ強盗」、実は逮捕される以前に、写真入りの指名手配が川口市に張り出され、ほんわかソフト唐沢君は困ってしまったという。この時期、唐沢君の就職内定が取り消しになるのではないかと心配されたが、不幸中の幸いで、なんとか会社には知られていないようであった。


引用されている新聞の日付は1993年3月11日、『上九』発売の2年前である。むむ・・・就活中の学生という話は一体何だったのか?

この矛盾を更に裏付ける情報を発見した。94年に発売されたコナミ『魂斗羅ザ・ハードコア』のスタッフ欄に「唐沢幸一」という名前が載っているのだ!これは紛れもなく、カナイカラサワのカラサワくんの方であろう。

つまりカナイカラサワのうち、カラサワくんの方は95年時点で学生ではないということが確定したわけである。カナイくんの方はほとんど情報が出てこなかったのだが、恐らく同い年である可能性が高い。つまりSPA作者=カナイカラサワではない。

ここからは憶測になってしまうが、SPAの作者インタビューはハッピーソフトによる宣伝を目的とした作り話と考えるのが妥当だと思います。(イラン人がどうのこうのの時点で怪しいだろ!と言われれば、その通りなのだが・・・)


さて、VICE記事で「上九」作者であると名指しされた、カナイカラサワ(別名義:ほんわかソフト)とはどのような二人組だったのだろうか。残念ながら現在彼らの作品を入手することはできないが、幸いネット上にプレイ動画や活動をまとめたページが存在する。以下にリンクをまとめておく。

(注:以前Vectorにアップされていたらしいが、2025年現在は入手不可)

『気持ちディスク』シリーズ

PC-8x01 DOUJIN gallery

彼らの「気持ちディスク」なる連作をまとめているページ。(第三者によるもの)

中身は主にカナイ君とカラサワ君が長渕剛や工藤静香を歌ったり、MCハマーの曲に合わせて踊ったりするたわいもない内容。「歌ってみた」「踊ってみた」の最古の例かもしれない。

YOUTUBEで動画がアップされているので聞いてみたが、音割れがひど過ぎてジャイアンリサイタルみたい。

おたのしみセーラームーン・ぬぎぬぎセーラームーンR

ほんわかソフト - PC-98 同人ソフトギャラリー
カナイカラサワ&ほんわかソフト&妖しげソフトひとまとめにします。Vectorにあるのはフリー扱いとして現状ではのせてませんやさしくしてねじゃんけんおしおきキライ!2ACT見た目に反して音楽・ゲームとも...

アニパロもののシリーズ。プレイ動画が見つからずゲーム内容は不明だが、『ぬぎぬぎセーラームーン』についてはツイッターで「脱がない上に大爆笑した記憶しかない」という当時プレイした人の感想を発見した。一体どんな作品なんだ。気になる・・・。

『上九』にもアニメキャラが登場

おしおきキライ!2

彼らの名を決定づけた代表作。巨大化した友人の攻撃を右に左にかわしながら避けるアクションゲームである。「おしおきキライ!2」ということは、「おしおきキライ!1」もあるのだろうかと探してみたが、見つけることはできなかった。

本作は、

  • 「くだらないいたずら、そろそろ卒業しようね」
  • 「チクワを盗ったら怒りますよぉ」
  • 「風邪を引いているのに、ひどい!」
  • 「包丁を持って、ほんわか気分の金井君」
  • 「ちょっと普通じゃないよね、唐沢くん」

の5ステージで構成されており、カナイ君とカラサワ君が交互に巨大化しながら、お互いにやり返し合うという内容だ。

攻撃モーションも個性的で、お箸でつつく、鼻をかんだティッシュを落とす、ナイフとフォークで食べようとする、口からピンポン玉を吐くなど、多彩で見ていて飽きない。クリアすると唐沢君の可愛い愛犬・タロウの写真が見られるよ。

このゲームの特徴の一つとして、残り体力と画面右上の顔写真が連動しており、ミスが重なるにつれてカナイ君・カラサワ君の笑顔が徐々に変顔になっていく。これは『上九』と共通する要素であり、なにげに見逃せないポイントである。

『上九』でも尊師の体力が減るとどんどん気持ち悪そうな顔になっていった。
直観的でわかりやすく、ユーモアを感じさせる表示である。
顔面=残りHP制の最も有名な例は『DOOM』(93)のドゥームガイであろう。

ちなみに、音楽・効果音でクレジットされている新田勝貴氏は、セガサターンの起動音(ぶうぉおーんふぉおーんむぉおーん)を制作した人物である。氏のツイッターによると、学生時代にカラサワ君と同じ研究室だった縁で担当することになったらしい。道理でクオリティが高いわけだ。

いやあ、なんかいいですね、この二人。金正日似の陽気なメガネ男子・カラサワ君と、二枚目風のクールなカナイ君、二人のキャラが立っているのが魅力的だ。技術的には高度なのに、やっていることは「あっち向いてホイ」や変な紙芝居、奇妙な踊り、よくわからないセーラームーンのパロディなど・・・まさに「才能の無駄遣い」という言葉がしっくりくる作風である。

プレイ動画を見ていると、まるで彼らが古くからの友人であるかのような気さえしてくる。まさに、オタクの理想形といえる二人だろう。


さて、Matthew Gault の記事に戻るが、彼はネット上でカナイ・カラサワ両名と思われる人物を見つけ、コンタクトを取ろうとしたものの、返事はなかったという。内容が内容だけに、二人が自ら作者であると名乗り出ることはないだろう。公式には、今もなお『上九』の作者は不明とされている。

(『ゲームウララ』上でのくろs…もとい陳大黒の話によると、作者は当初コミケで販売するつもりだったが、取りやめたとのこと。)

最後に、なぜ『上九』は信者が作ったゲームだという誤解が広まったのだろうか。身も蓋もないが、「その方が面白いから」というのが最大の理由だろう。プレイした人ならわかると思うが、これはどう見ても“不謹慎文化”から生まれた作品であり、信者の手によるものとは考えにくい。ただ、この膨大な素材を集めきった熱意は、信者の情熱にも通じるものがあるかもしれないが……。

ちなみにカナイカラサワのその後だが、PlayStationソフト『ウルトラマン Fighting Evolution』(98)で二人揃ってディレクターとしてクレジットされている。他、エニックスが出した音楽ゲーム『バスト ア ムーブ』(98)やハドソン『ボンバーマンジェッターズ』(02)に参加。以降の足取りは不明である。

上九一色村エンディング

追記

※実際にカルト宗教の元信者が製作したゲームも存在する。(PC-98,DOS『文鮮明の野望』)
せっかくなのでReadmeファイルの文章を全文掲載。こちらは『上九』と違い、過去を悔やむ内容でいたって真剣。

文鮮明の野望(ノンフィクション) 

はじめに 

私 MIXSAND は1986年12月より1992年2月まで統一協会に一般会員として籍を置いておりました。私が統一協会に接触を持ったのは、自分の家庭問題を解決したい、という思いからでした。

統一原理を学ぶうちに、もし自分がこの世界のために、日本のために、何か出来るのなら。自分の命をも賭けてこの道を行きたい。このように思いました。

青春、全財産、友人関係、仕事全てを捧げて、統一運動に身を投じましたが、2年、3年と活動を続けるうちに、統一協会組織、教祖文鮮明自体に矛盾を感じるようになり、1992年2月に脱会する事になりました。

統一協会に入る前はゲーム作家をしておりましたので、今回私の統一協会での出来事を、ゲームを通じて描いてみたいと思い、この作品を作ってみました。

統一協会の描写に対して正確さを欠く所もありますが、この所は今バージョンに関してはどうぞご容赦くださり。私までメールにて指摘して頂きたく思います。

統一協会報道に関して 

このたび、山崎浩子脱会報道がマスコミをにぎわしておりますが、この報道の視点が芸能ニュースに置かれている点が問題ではないかと思います。

1.統一協会とは韓国人の教祖文鮮明の独裁組織であること
2.文鮮明は人類のメシヤを称し、政治、経済、宗教界に対して進出し、最終的には文鮮明の独裁体制を作り上げようとしていること

この2点を取り上げないことは、大衆メディアとしての使命を欠いていると言わざるを、得ません。特に統一協会と政界とのつながりに関して、もっと突っ込んだ報道がされてもいいのではないでしょうか。明らかに日本政治に対して干渉を行おうとする国外勢力に対して、迎合している自民党政治家を、マスコミは何故取り上げないのでしょうか。

国会の場で公然と霊感商法を認める発言をした、中曽根康弘元総理や、前科を持っている文鮮明を外務省に対して圧力をかけ入国許可を出させ、自ら文鮮明と会談した金丸信元副総理は、何故追求されないのでしょう。

私は冷戦時代に西側の政治家として共産主義陣営に対して、毅然とした態度で反共を貫いた中曽根元総理は政治家として立派であったと思います。冷戦終結後の今、中曽根元総理は自らが課した、内政のつけを払うときが来たのではないでしょうか。

また統一協会の信者で構成されている企業組織に対しても、更に詳しい報道がされても良いのではないでしょうか。埼玉県下第2位の企業規模を誇るコンピュータ機器企業ワコム等についても、もっと詳しく報道されて良いのではないでしょうか。

私の左手には、この世に地上天国実現、日本の為にと思い、拳を握り決意を込めて祈った時に、肉が堅くなってできたタコがまだ残っています。

自分の左手を見るときに、あの時日本のために祈った祈りは何だったんだろうと、思い返します。結果として偽メシヤの手先となり、この日本に対して、世界に対して、この自分は本当に申し訳ない存在だったと思います。

こんな私が人のことを、とやかく言う資格はありませんが、自分自信が統一協会で過ごした5年間で感じたこと、知ったことを正しく伝えることは自分の使命ではないかと考えています。

                  1993年5月2日 MIXSAND

参考文献

クーロン黒沢「電脳画法第20回 暗黒ソフト入手!」『週刊SPA!』9月20日号,1995年,p.97-99.

陳大黒「超現実シミュレーションゲーム「香港97」のハッピーソフトから登場!その名も「上九一色村物語」」『ゲームウララ メガストア11月号増刊』Vol.4,1995年,p190-191.

Ferho(2022)「上九一色村物語 ~オウム真理教の救済~」(note)<https://note.com/ferho/n/nec8376519208>(参照日2025-1-18)

オニオンソフト(2024,4/18).[なんか昔のPC98用ソフトのマニュアルが出てきたけど、すごいパワーだな… ほんわかソフト(妖しげソフト=カナイカラサワ)はそろそろ復活して新作を出してくれるのを待ってます]Retrieved from https://x.com/onionsoftware/status/1780958422823039380

新田勝貴(2023,8/30).[そうです。ほんわかソフトの唐沢君は大学の研究室が同じでした。あとやさしくしてね98にも音を付けた記憶が。]Retrieved from https://x.com/read_me/status/1696554387219288308

白須昇(2010,11/13).[企画書は書き方もよくわからなくて適当に作成。ビデオはウルトラマンのディレクター、唐沢くん、プログラマーの金井君に協力して作ってもらうことに。]Retrieved from https://x.com/nobomac/status/3326532109991936

Matthew Gault(2019) 「The True, Secret History of the Creepiest Cult Game Ever Made」(VICE)<https://www.vice.com/en/article/the-true-secret-history-of-the-creepiest-cult-game-ever-made/>(参照日2025-3-22)

akagai(2018)「PC-98 同人ソフトギャラリー ほんわかソフト」(Seesaa Wiki)<https://seesaawiki.jp/akagai_pakkuri/d/%A4%DB%A4%F3%A4%EF%A4%AB%A5%BD%A5%D5%A5%C8>(参照日2025-3-22)

anonB(公開日不明)「PC-8801同人ソフトギャラリー」<https://www.cug.net/~anonB/dj/djview.cgi?0405>(参照日2025-3-22)

ガッチチャンネル.”【レア度★★★】PC98レトロゲーム「おしおきキライ2」伝説のゲーム再び!?”.YOUTUBE.2023年3月2日,https://www.youtube.com/watch?v=1WJQCVp77vM&t=163s(参照日2025-3-22)

MADの奇妙なマイナーゲームの世界ch.”・PC88 同人 唐沢君の歌”.YOUTUBE.2023年7月4日,https://www.youtube.com/watch?v=BrhFjIN_2tc(参照日2025-3-22)

THEつぶろ.”作者は信者だった?オ○ムを題材にしたゲーム「上九一色村物語」【都市伝説】”.YOUTUBE.2022年10月3日,”https://www.youtube.com/watch?v=_qsRKJqD2lw&t=149s”(参照日2025-3-22)

つるポン.”【RTA/WR】上九一色村物語 GoodEND 2:43【ゆっくり解説】”.ニコニコ動画.2021年5月3日,https://www.nicovideo.jp/watch/sm38729674(参照日2025-3-22)